ナースの問診を受ける妊娠中の女性

妊娠すると赤ちゃんのことが気になり、少しの変化にも敏感になってしまうものです。妊娠初期によく起こる下腹部痛にはそれほど心配しなくてもよいものと注意が必要なものがあります。

今回は妊娠の下腹部痛の原因や解消法、予防のポイントをお伝えします。






妊娠の下腹部痛の5大原因!症状・対処方法とは


1)下腹部痛の右側・左側の違いとは

右の下腹部痛は比較的よく見られる症状で、痛みがあまり強くなく、長時間続くものでなければ、それほど心配する必要はありません。

赤ちゃんの成長に伴って、子宮の筋肉やじん帯が引き伸ばされることにより痛みを生じていると考えられます。

(1)右の下腹部痛

只、右下腹部痛で激痛を伴う場合は、虫垂炎の可能性もあります。放置すると腹膜炎を起こし、最悪の場合は死亡するケースもありますので、強い痛みを感じたらすぐに受診しましょう。

(2)左の下腹部痛

左の下腹部痛は便秘が原因のことが多いようです。子宮が大きくなることで腸を圧迫し、便秘になりやすくなります。

また、妊娠中に増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)によって腸の動きが鈍くなることも便秘をおこりやすくしています。

2)妊娠の下腹部痛の5つの症状

下腹部痛は妊娠の超初期にあらわれる症状の一つです。生理予定日より1週間ほど後に体の変化を感じ始めることが多いようです。症状は人により様々ですが、主に以下のようなものがあります。

(1) 子宮まわりの引っ張られるような痛み

子宮が大きくなり、周囲を圧迫するために生じる痛み

(2) 足のつけ根のあたりのけいれん

子宮をささえている靱帯が、急激に伸びることで発生

(3) ひどい左下腹部痛

便秘によるもので、対処が遅ければ手術が必要になる場合あり

(4) 下痢をともなう腹痛

体内のホルモンバランスが急激に変化することによりしばしば発生

(5) 出血をともなう強い痛み

流産やその他の病気の可能性のある症状

出血をともなう強い痛みは勿論、便秘によるひどい腹痛を除いてはそれ程心配する必要はありませんが、痛みが継続する場合は念のため受診しましょう。

3)妊娠の下腹部痛の5大原因

前述の通り、妊娠初期にみられる下腹部痛の主な原因は以下の5つです。

(1) 子宮の拡大やじん帯の延伸

(2) 便秘

(3) 下痢

(4) 流産(切迫流産)

(5) 病気

腹部の痛みが段々と増してくるようなケースは、早めに専門医に相談をしましょう。

妊娠の期間中は特に、妊娠12週までの妊娠初期の時期に、流産が発生しやすい期間であるといえます。妊娠初期に流産を発症する確率は10%程度と高く、用心が必要です。

切迫流産と判断された場合でもしっかりとした診察を行いましょう。心拍数が正常であり、赤ちゃんの姿が確認されれば、妊娠を継続できるケースもあります。

Female doctor making notes

4)妊娠の下腹部痛が続く場合に考えられる2つの病気

出血や下腹部の強い痛みがある場合は、次のことが考えられます。

(1) 子宮外妊娠

何らかの原因によって受精卵が子宮まで運ばれず、子宮以外の部位に着床してしまう状態です。殆どの場合は、卵管内に着床します。

子宮外妊娠の発生確率は、全妊娠の0.5~1.5%程度だと言われています。

(2) 絨毛膜下血腫

胎盤ができる時に子宮内膜に根をはる過程で、血管が絨毛膜に入り込み、血管が増えるために出血が起こりやすくなります。

鮮血が大量に出る場合もありますが、妊娠が継続している限り流産とはならず、赤ちゃんは育っていきます。

5)妊娠の下腹部痛へ自宅で実践できる3つの対処方法

下腹部痛の内、出血や強い痛みを伴わないものについては、症状を改善させるまたは悪化させないために自宅で出来ることがあります。

(1)出来るだけ安静に

日常生活の動作をゆっくり行い、出来るだけ安静をこころがけましょう。痛みがある時期に体と心に大きな負担がかかると、流産などの恐れがあるので注意しましょう。

(2) 体をあたためる

子宮が大きくなって骨盤を圧迫すると、骨盤まわりの筋肉が硬くなって血行が悪くなり、体が冷えます。体をあたためると、冷えによって生じた痛みを改善することができます。

(3) オリゴ糖を摂取する

オリゴ糖を摂取することで、腸内のビフィズス菌を増やし、腸内環境が整うことで、便秘や下痢を予防することができます。

6)妊娠の下腹部痛が続く場合にすべき4つの検査方法

出血や強い下腹部痛が継続する場合、流産(切迫流産)や病気の可能性があります。速やかに検査を受け、状態を確認しましょう。検査には主に以下の4つがあります。

(1) 問診

子宮外妊娠の診断上、正確な妊娠週数を算定することは極めて重要で、問診はその鍵となります。また、妊娠歴や腹部手術歴などもリスク要因となるため、問診で確認することが必要です。

(2) 内診

子宮口や子宮頸部の状態を確認し、超音波検査などと組み合わせて流産や切迫流産等の診断を行います。

(3) 超音波検査

妊娠初期では、プローブという検査器具を腟内に挿入する経腟超音波検査を行い、子宮内部の状態や胎児の心拍の有無を調べます。流産(切迫流産)、子宮外妊娠、絨毛膜下血腫の診断に利用されます。

(4)血液(または尿)検査

血液中または尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンの数値の変化を一定期間観察し、流産、切迫流産、子宮外妊娠の診断を行います。

Doctors who are using the tablet

7)妊娠の下腹部痛が続く場合にすべき2つの治療方法

(1)子宮内容除去術

不幸にして流産となってしまった場合は、多くの場合、子宮内容除去術を受けることになります。手術は麻酔をして行われ、所要時間は5~10分です。

赤ちゃんや付属物(胎盤のもとになる組織など)を胎盤鉗子で除去し、さらにキューレットと呼ばれる器具で掻爬します。

(3) 腹腔内鏡下手術(または開腹手術)

子宮外妊娠では、早期発見の場合を除いて、手術が必要になることが多いです。手術には着床部位の卵管を切除する根治手術と、卵管を切開し胎嚢を除去するだけの保存手術があります。

最近では開腹手術の他、腹腔内鏡下手術も増えており、体への負担も小さく、術後の癒着も少ないというメリットがあります。

8)妊娠の下腹部痛へ日常からできる3つの予防ポイント

(1)転倒や衝突の危険性のある行動を控える

自転車や車の運転、満員電車などは転倒や腹部に衝撃が加わる可能性があり、流産や早産の危険を引き起こします。出来るだけ避けるようにしましょう。

また、歩くときはハイヒールを履かないようにしましょう。

(2)おなかを冷やさない

おなかが冷えると便秘や下痢の原因になります。出来るだけ温かいものを食べるようにし、腹巻などをしておなかが冷えないようにしましょう。

(3)ストレスを避ける

妊娠初期にはホルモンバランスの急激な変化や妊娠に対する不安などお母さんに大きなストレスがかかり、そのことにより便秘や下痢などの腹痛が引き起こされます。

重いものを持ったり、立ちっぱなしの仕事などストレスのかかる行動を出来るだけ避けましょう。

妊娠時の下腹部痛には、胎児の成長に伴って自然に発生するものや、流産や子宮外妊娠などによる予防することの出来ないものがあります。

妊娠をしたら、母体や胎児についての知識を深め、予防できることはその努力をし、そうでないものについては受け入れる覚悟をすることが大切です。

そうすることで、妊娠に対する不必要な不安や、そこからくるストレスを逃れることができるようになります。






今回のまとめ

1) 妊娠時の下腹部痛は左右どちらかで原因を推測することができます。

2) 妊娠初期の下腹部痛の多くは、それほど心配する必要はありません。但し、継続する強い痛みがある時は早めに受診しましょう。

3) 妊娠時の下腹部痛は、胎児の成長にともなう自然な痛みと流産や病気が原因の場合があります。

4) 妊娠時の強い下腹部痛を引き起こす病気には子宮外妊娠や絨毛膜下血腫などがあります。

5) 妊娠時の下腹部痛の内、自然な痛みについては、自宅で軽減させる方法があります。

6) 強い下腹部痛が継続する場合は、深刻な場合があります。速やかに検査を受けましょう。

7) 流産や子宮外妊娠の多くは手術が必要です。

8) 妊娠時の下腹部痛は予防可能なものと、避けられないものがあります。予防可能なものは努力をし、そうでないものは受け入れる覚悟をしましょう。

ただでさえストレスのかかる妊婦さんが必要以上の不安を抱えることのないよう、これらの情報を役立てていただければと思います。