患者の問診を行うドクター

ちょっと胸やけがしたり胃が痛むと、「胃潰瘍」という言葉が頭に浮かびます。症状を見過ごしたり、「自分は胃潰瘍じゃないのか」とビクビクすることのないよう、しっかり実態を知ることが大切です。

今回は胃潰瘍の原因や考えられる症状、治療法についてお伝えします。






胃潰瘍の2つの治療法!3つの検査法と予後とは


1)胃潰瘍とはなにか 

「胃潰瘍」とか「十二指腸潰瘍」とか、よく聞きます。近年では「潰瘍性大腸炎」も加わりました。そもそも「潰瘍」とはなんでしょうか。

それは組織が破壊されることを意味します。表面の炎症や傷にとどまらず、内部まで組織細胞が壊され崩される状態です。つまり胃潰瘍は、胃粘膜の下層まで浸蝕が及んだ場合をいいます。

(1)胃潰瘍の種類

胃潰瘍の種類は、自覚症状で分かれます。上腹部の痛みがあるタイプと、痛みをまったく自覚しない2タイプがあります。

これは、それぞれの原因に由来しているので、心当たりのある人は、症状がなくても要注意です。

(2)新生児と大人の違い

「胃潰瘍」というと、なんだか中年男性のイメージがありますが、新生児から高齢者までの国民病、それが胃潰瘍です。35万5千人が常に治療中といいますから、いつ、だれがなってもおかしくない病気、ともいえます。

原因は、新生児や小児の場合はストレスといわれ、成人の原因とは異なります。新生児が胃潰瘍なんて、とお思いでしょうが、出産するとき、母体のみならず新生児にも、とてつもないストレスがかがるといわれます。

また、胎内にあるときの母親の飲酒や喫煙がストレスになることも、わかってきました。小児が強い抗生物質を服用することも、胃に負担がかかって、潰瘍の原因になるそうです。

とくに若年層は、ストレスでは胃潰瘍より十二指腸潰瘍の発症が多いといわれます。

2)胃潰瘍の代表的な3つの症状

(1)胃の上部の痛み

先ほど述べましたように、胃潰瘍は自覚症状の有る無しに分かれますが、一般的には胃の上部がシクシク痛む、という症状が知られています。

(2)食後の痛み・胸やけ

とくに食後1時間ほどしてから痛むことが多いようです。胸やけや吐き気が襲うこともあります。しかし、食欲が落ちることはありません。

初期・中期とはっきり分けられず、初めから吐き気がする、という人もいます。いろんな症状がありますので、かえって見過ごすかもしれません。

(3)はっきりと症状が現れないケースも

「胃潰瘍はいつの間にか治る」という話もよく聞きます。それは原因や生活習慣、そして体質など、まったく個人による違いが関わりますので、決して鵜呑みにしないでください。

血を吐いたり便に黒い血がみられると、かなり切迫した事態です。すぐ医療機関を受診してください。

3)胃潰瘍の2大原因 

(1)ピロリ菌

胃潰瘍の原因はストレスとずっと信じられてきました。しかしながら現在、成人の胃潰瘍の原因の70%は「ピロリ菌」と言われます。

ヘリコバクター・ピロリという菌は胃粘膜を分解し、これに対抗するために白血球の出す酵素がまた胃に障害を起こす。なんとも厄介なものです。

(2)非ステロイド消炎鎮痛剤

代表的なものにアスピリンがあります。これを長期に服用すると、胃粘膜を守る物質の働きが阻害され、胃の細胞が壊れてしまいます。

怖いのは、自覚症状がないことです。なぜなら、鎮痛剤を飲んでいるので、痛みがブロックされるのです。心当たりのあるかたは、注意してください。

また、慢性胃炎をほっておくと、潰瘍にまでなる可能性も当然あります。ただ、胃潰瘍がガンになるというのは、信憑性はあまりないそうです。

Doctor and surgeon looking at a computer

4)胃潰瘍の2つの対処法 

(1)ピロリ菌の除去

自分がピロリ菌に感染しているかどうかは、医療機関で簡単に調べられますし、もし保菌者なら、投薬で除去できます。

すべて保険適用ですから、費用も安心。健康なうちから調べて対処しておけば、転ばぬ先の杖、です。

日本におけるピロリ菌の保菌者は、50歳以上では80%、6000万人いるといわれます。

赤ちゃんに口移しで食べ物を与えるなど、ピロリ菌に感染させているようなものです。おばあちゃま、ぜったい孫への口移し、やめてくださいね。

(2)非ステロイド系医薬品を減らす

薬を減らすか胃を保護する薬を併用するか、ですね。どちらにしても勝手に判断しないで、かかりつけのお医者さまと相談してください。

5)胃潰瘍の2つの治療法

(1)上記の2点が原因の場合

ピロリ菌が原因でも、治療薬が原因でも、胃粘膜を保護し胃酸を抑制する薬を投与することが主な治療になります。

痛みがひどい場合は、点滴注射をしてもらえます。痛みがひどい場合は、入院加療もあります。

もちろん、これに食事療法が大切なことはいうまでもありません。胃に負担をかけない消化の良い食事内容、アルコールやタバコを含む刺激物を避けること。

(2)胃潰瘍への後期の治療

後期になると、手術の可能性もあります。胃壁に穴が開いている、潰瘍の状態がひどくて患部を摘出する、というところまで進行しているときです。

当然、入院加療が必要になります。ここまでくる人は、全体の2%ほど、と言われています。

6)胃潰瘍の3つの検査方法

(1)胃腸科・消化器内科

検査の機器もそろっていますし、専門家なので診断も治療法の決定も早いでしょう。

(2)ピロリ菌検査

息を袋にためて「尿素呼気検査法」で菌の有無を調べます。その場ですぐ調べられ、事前の準備もありません。

検査結果が出るのは、医療機関によってまちまちですが、2,3日もかからないでしょう。費用も3000円程度。もちろん保険適用ですから、その3割の支払いです。

(3)レントゲン検査

これはバリウムを事前に飲む必要があります。

さらに検査のあと、バリウムをすぐ排出しないと、腸のなかで固まってしまうおそれがあり、そのため下剤を飲まされますので、けっこう大仕事になります。ほぼ一日以上の仕事、といってもいいでしょう。

ただ、この検査では「胃の変形などが全体的に診られる」といわれ、いまでも重宝される検査法です。

(4)内視鏡検査

俗にいう「胃カメラ」です。カメラがいまはとても小さくなっているので、ひところのような大変さはありません。

直接、胃の内部を診られますので、進行具合も場所も確かめられます。もし腫瘍があれば、ついでに切除もします。

生検に回してガンかどうかも調べられます。胃を空にするため、当日は食事はできませんが、検査がすめば、即、普段の状態に戻れます。ただ、麻酔に弱い人は、吐き気やめまいが残ります。

(5)検査費用

(3)(4)の費用は、ともに1万2000円ほど。保険適用です。

このほか超音波法も併用されつつあります。費用は上の検査と同じです。

手術の場合は費用もかかりますが、公的保険の加入者なら高額療養費限度額制度がありますので、事前に市町村の保険の窓口か会社の庶務に相談しましょう。

ただ、入院中の部屋代や食事代は別途請求になりますので、ご準備が必要です。

Two women doctors talk about examination

7)完治までの予後・生活の注意点

(1)胃潰瘍は気長に

薬を飲めば、すぐに調子よくなった、と思えるのが胃潰瘍です。でも、それは表面だけのこと。胃潰瘍は胃壁の深部まで罹患していますから、じっくり治すことがポイント。

最低でも2か月は、薬を飲み続けましょう。完治していないと再発の可能性が高く、それを繰り返すと手術、ということになりかねません。勝手な判断は禁物です。

(2)薬を飲んでいる間の食事の注意点

暴飲暴食をしないことです。「胃が病気」なのだと自覚し、けして無理をさせないことです。「胃を安静に」を心がけてください。香辛料やコーヒーも減らしてくださいね。タバコはもちろん禁止です。

(3)生活の注意点

「胃の安静」とともに、体もいたわってください。「腹も身のうち」、体をいたわってこその「胃の治療」です。

睡眠をしっかりとり、適度な運動と休息をする。こうすることでストレスも軽減できれば、なお素晴らしいのですが。

8)胃潰瘍を日常から予防する2つのポイント

(1)ピロリ菌に感染しないこと

原因の大半を占めるピロリ菌の感染を防ぐ、といっても、方法はありません。せめて自分がピロリ菌に感染していないかを検査し、もし保菌なら、すぐ除去治療をしましよう。

治療してもまた感染する可能性もありますので、数年に一回は検査したいものです。

(2)鎮痛剤の飲み続けに用心

よく頭痛や腰痛を市販の鎮痛剤でしのいでいる人がいますが、これは、続けるととても危険です。どんどん薬が強くなってしまって、その間に胃粘膜もどんどん荒れてしまいます。

医師や薬剤師に相談し、適切な処方をしてもらいましょう。

(3)体をいたわる生活

過労、睡眠不足、暴飲暴食。すべてが体力を消耗し、結果として「胃」への負担になります。

よく寝て、栄養バランスのいいものを適量食べて、運動してストレス発散させて、禁酒禁煙。糖尿病の人が「生活習慣を見直したら、胃潰瘍も治った」というのは、この典型でしょう。

「いつの間にか治った」という説も、知らず知らずに節制したからなのだと考えられます。






今回のまとめ

1)胃潰瘍とはなにか 

2)胃潰瘍の代表的な3つの症状

3)胃潰瘍の2大原因 

4)胃潰瘍の2つの対処法 

5)胃潰瘍の2つの治療法

6)胃潰瘍の3つの検査方法

7)完治までの予後・生活の注意点

8)胃潰瘍を日常から予防する2つのポイント