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ロタウイルス性胃腸炎とはロタウイルスに感染して生じる急性の胃腸炎です。主に乳幼児期にかかりやすい病気で、大人は何度も感染した経験があるため、殆どの場合は症状が出ませんが、まれに症状が出ることもあります。ここでは大人の症状について解説します。






大人のロタウイルス性胃腸炎へ!3大症状と対処方法とは


1)症状のチェックを!大人のロタウイルス性胃腸炎の代表的症状

大人の場合、感染しても症状が出ないか症状が軽く、倦怠感や軽いむかつきなどで留まり治癒することが多いです。ただし、免疫力が落ちていたりすると症状が顕出することがあります。大人の感染、発症のピークは20~30歳代と50~60歳代にあります。

(1)初期症状

感染すると潜伏期間が24~72時間(1~3日)あり、その後、突発的に吐き気や嘔吐、腹痛に伴い、軽い発熱や咳が出ることがあります。嘔吐は概ね12時間で治まり24時間以上続くことはまれです。

(2)中期症状

嘔吐がおさまる頃から下痢が始まります。下痢は米のとぎ汁のような白色から黄色で激しい水様便です。下痢の症状は大半のケースでは1週間程度で回復します。

(3)後期症状

その後も下痢便が続き、適切な処置をせず水分が失われ続けると合併症の脱水症になり、痙攣やショックを生じることがあります。また、肝機能障害、腎炎、腎不全、心筋炎、脳炎、脳症、腸重積などの重篤な合併症を引き起こす危険もあります。

2)種類の違いを知ろう!ロタウイルス性胃腸炎の5つの種類と症状の違い

人から検出されるロタウイルスの遺伝子型の種類は1種類ではありませんが、その遺伝子型は「G1」「G2」「G3」「G4」「G9」の5種類の型が大部分を占めています。その割合は国、地域により異なり、年によって少しずつ変化します。ロタウイルスは一度感染した後も別の型に感染する可能性があります。日本でも上記5種類が多く見られます。ロタウイルスは一般の環境下でも安定で、感染力が非常に強いウイルスです。

ウイルスが10~100個程度の極微量な粒子でも経口感染で感染します。ただし、ロタウイルスの遺伝子型が異なっていてもある程度の交差免疫が働くので、感染を繰り返す度に症状は軽くなると言われています。大人で症状が顕出する場合は、どの型にかかっても乳幼児でみられる症状と大きな違いはありません。ロタウイルスの主な感染経路は人や環境表面(手すりやドアノブ、タオルなど)などを介した糞口感染が始まりで、接触感染で拡散・伝播されると考えられています。

3)なぜ胃腸炎に?大人で感染してしまう3大原因とは

(1)感染児の家族

ロタウイルスは非常に感染力の高いウイルスで、ロタウイルス性胃腸炎を発症している子供と接触した成人の内30~50%が感染すると言われています。感染児の嘔吐物や便の処理、ウイルスに汚染された衣類等を適切に処理し、手洗い等を徹底しても、ロタウイルスの環境中での安定性や感染力の強さから感染を防ぐことは成人でも非常に難しいとされています。先にも触れたように大人の場合感染しても症状が出ないか、出ても軽い事が多いですが、ストレスや疲れ、栄養不良、薬剤の使用等により免疫力が弱っている人は症状が顕出する恐れもあるので注意が必要です。

(2)高齢者

人の免疫力は20歳代をピークに徐々に低下していきます。免疫力が弱るとロタウイルスに感染した時に症状が顕出する可能性が高くなります。健康な人でも高齢者は注意が必要です。

(3)免疫不全者

免疫不全は先天性(遺伝)の場合もありますが、後天性免疫不全は薬剤の利用や糖尿病、HIV感染症などの病気にかかったりすることが原因になります。免疫機能が正常に機能しないため、ロタウイルスなどに感染すると発症しやすくなります。

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4)応急処置を!症状へ試したい対処方法とは

ロタウイルス性胃腸炎は抗ウイルス薬がないので対症療法になります。ロタウイルス性胃腸炎の合併症で怖いのは、嘔吐や下痢による脱水症になることです。まずは嘔吐が始まってから5~6時間は何も飲食せずに安静にしましょう。その後吐き気が治まったら、少量ずつの水分補給をこまめに十分に行いましょう。牛乳などの乳製品は避け、白湯や薄いリンゴジュース、低糖質のスポーツドリンクなどが良いです。次に嘔吐がおさまったら体力消耗を防ぐために栄養補給が必要です。

おもゆ、野菜スープ、リンゴのすりおろし等から摂り始め、お粥、うどん、パンなどのデンプン類、ヨーグルト、豆腐など消化が良いものを摂るのが良いでしょう。一度にたくさん食べるのではなく少量を何回かに分けて摂るようにしたほうが良いとされます。脂質の多い食物、菓子の類、野菜でも繊維質が多いもの、香辛料等は下痢を起こしやすいので避けたほうが良いです。激しい下痢が続きますが4日~長くても1週間で症状が回復します。

下痢が激しくても下痢止め薬などはかえって症状を長引かせる原因にもなりますので服用は避けてください。また、水分を摂ってもすぐ吐いてしまう、尿が出ない、脱水症状がひどい場合は早急に医療機関で点滴するなどの治療が必要です。ロタウイルス性胃腸炎の合併症として脱水症状は重篤な症状になることがあるので自己判断は危険です。このような症状が出ている場合は早めに医療機関を受診しましょう。特に妊婦さんは激しい下痢が3日以上続く、立ちくらみが頻繁に起こる、お腹の痛みがある場合は早期受診が肝要です。

5)治まらない場合は専門家へ!病院で行うべき検査・治療方法

上記のように症状が治まらない場合は、かかりつけの内科、胃腸科、消化器内科を受診しましょう。

(1)検査方法

ロタウイルス性胃腸炎の診断法は、最近multplex RT-PCR法という遺伝子検査も行われるようになってきていますが、費用が高い上に装置がない医療機関では1週間前後時間がかかります。食料品関係の従事者意外は受ける必要はないと考えられます。一般的に最も用いられる簡便な方法はイムノクロマト法による迅速診断検査で、便を用いてウイルス抗原を抗原抗体反応で検出する方法です。およそ15分程度で結果が出ます。ただし、感染していても陽性反応が出ないこともあります。100%確実に診断ができない上に、迅速診断検査キットの価格が3000円程度掛かり、それに検査料や初診料などの診察料が掛かるため、問診により、医師が必要を認めた場合に行われることが多いようです。

(2)治療方法

ロタウイルス性胃腸炎には特異的な療法がなく、抗生物質も効きません。よって対症療法として軽症の場合は経口補液投与や外来での静脈輸液(点滴)、整腸剤の投与、及び安静にすることになります。中等症以上の場合は入院して経口補液と点滴を併用することになります。また、合併症がある場合はそれに応じて治療が施されます。

6)ロタウイルス性胃腸炎へ日常からできる4つの予防習慣

(1)手洗い・うがい

日頃からの予防としては、食事前やトイレ後、帰宅後など、石鹸を使ってしっかりと手洗いをすることと、うがいを行うことが大切です。

(2)免疫力維持

規則正しい生活を送り、十分な栄養摂取、十分な睡眠、適度な運動の実施、ストレスの発散などを行い、自己免疫が低下しないように心がけることが大切です。

(3)二次感染の予防

ロタウイルスに感染した患者の嘔吐物や便には大量のウイルス(便1g当たり100億個)が含まれています。また、下痢の症状が回復した後もしばらくはウイルスが検出されるので十分な注意が必要です。

1.汚物の処理方法

患者の嘔吐物や便を処理するときは、まず使い捨てのゴム手袋とマスクを使用し、汚物はペパータオル等で取り除きます。残った汚物の上をペーパータオルで覆い、その上から5~10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(市販の塩素系漂白剤なら50~100倍に薄めたもの)を十分浸るように掛けて、汚染箇所を広げないようにペーパータオルでよく拭きます。このとき、汚物が乾燥するとウイルスが空気中に漂い、それが口に入ると感染することがあるので、汚物が乾燥しないように処理することが重要です。汚物や手袋等を捨てる時にポリ袋などに入れてしっかり密閉して捨てるようにしましょう。

2.汚染物の消毒

汚物がついてしまった衣類やタオル、おもちゃ等は、ポリ袋などに入れて周囲を汚染しないようにし、熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱をするか、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で浸け置き消毒した後、他の衣類と分けて洗濯するようにしましょう。

3.処理者の消毒

汚物処理後の手洗いは指輪や時計を外し、石鹸で30秒以上もみ洗いします。汚物の処理時に手袋をした場合でも念入りに手洗いしましょう。

4.その他の消毒

家族に感染者がいるときは、便座、ドアノブ、手すり、風呂など、共用する部分をできるだけ次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒して、タオルの共用は避けてください。

(4)ワクチン接種

日本では乳児対象にワクチンを接種することができます。種類は2種類あり任意での接種ができます。単価ロタウイルスワクチン(生後6~24週の間に2回接種)、5価ロタウイルスワクチン(生後6~32週の間に3回接種)のいずれかで、どちらのワクチンも一回目の接種は14週6日までが推奨されています。ロタウイルス性胃腸炎は初感染時に重症化することが知られているので、重症胃腸炎や合併症の予防という面で必要性が高いといわれています。






今回のまとめ

1)症状のチェックを!大人のロタウイルス性胃腸炎の代表的症状

2)種類の違いを知ろう!ロタウイルス性胃腸炎の5つの種類と症状の違い

3)なぜ胃腸炎に?大人で感染してしまう3大原因とは

4)応急処置を!症状へ試したい対処方法とは

5)治まらない場合は専門家へ!病院で行うべき検査・治療方法

6)ロタウイルス性胃腸炎へ日常からできる4つの予防習慣